秀吉の朝鮮出兵と仙台味噌
豊臣秀吉の朝鮮出兵に際し、伊達政宗が浅野長政等と共に朝鮮に渡り蔚山で戦った時、他藩の味噌は夏期に腐敗してしまったが、仙台藩の味噌は少しも変質せず味も優れていたので、請われて他藩に分ち与え、一躍『仙台味噌』の名を上げたと伝えられています。
また、政宗公は常に城中の糧とする目的で大規模な味噌醸造の設備「御塩噌蔵」をつくり、真壁屋古木市兵衛は「御用味噌屋」となりました。(以上「仙台味噌の歴史」)
日本初の味噌工場
戦国武将たちは皆、戦闘能力を左右する兵糧(戦陣食)には重大な関心を持っていました。とくに米と味噌、この2つは絶対に必要な兵糧でした。しかし、みその携帯には苦労したようで、干すか焼くかしてみそ玉にしたものを、他の食料と一緒に竹の皮や手拭で包み、腰に下げるのが一般的だったようです。また干采や干大根などを味噌で塩辛く煮詰めそれを干し固めて携帯し、陣中で煮ればそのまま味噌汁になる方法も考え出されました。伊達政宗は軍用みそを他に頼らず自給しようと考え、城下に「御塩噌蔵」と呼ばれるみそ工場を建てました。これが最初のみそ工場であり、仙台みその始まりだとも言われています。
味噌の機能性
日本人はみそを、みそ汁という簡単な食べ方でずっと食べ続けてきました。それは、ただおいしくて栄養があるからではなく、みそにすごい力があることを経験的に知っていたからです。
がん予防、胃潰瘍の防止、コレステロールの抑制、老化防止、消化促進、整腸作用、美肌効果、脳の新陳代謝促進が主な効用で、その他にも放射線物質の除去など、数え切れないほどあります。
これらの働きが、今日では機能性といわれるものです。
大豆の熟成発酵による味噌の栄養
みその主原料である大豆は良質のたんぱく質を豊富に含む食品で、「畑の肉」といわれます。みそは発酵によって、大豆にはない、またはあっても少量のアミノ酸やビタミンなどが多量に生成され、栄養的にさらにすぐれたものになった食品です。みその栄養は、米みそ、麦みそ、豆みそでは、若干異なりますが、中心になるのは大豆の栄養です。大豆のたんぱく質は、酵素によって加水分解され、約30%がアミノ酸になります。その中には生命維持に不可欠な必須アミノ酸8種すべてが含まれます。
その他にも、炭水化物、脂質、灰分、ビタミン、カリウム、マグネシウム、繊維質など、たくさんの栄養素が含まれます。一つの食品で、これほど多くの栄養を含むものは、例がありません。
胃がんの予防効果
みそ汁を飲む頻度の高い人ほど、胃がんによる死亡率が低い!
これは1981年に、国立がんセンター研究所の平山雄博士によって発表された『みそ汁を飲む頻度と胃がんの死亡率との関係』の調査結果です。
みそ汁を飲む人と飲まない人を比べると、とくに男性では、全く飲まない人の死亡率は、毎日飲む人に比べて約50%も高いというものです。
これは胃がんだけではなく、心筋梗塞、肝硬変などの場合にも同じような傾向がみられます。
肝臓がん予防
みその成分中には、肝臓がんの発生を抑える作用があることが、実験で確かめられています。
肝臓がんが自然発生する系統の雄のマウスに、「標準のえさ」と「みそ入りえさ」をそれぞれ16ヶ月間与え続けたところ、みそ飼料を与えたマウスは、腫瘍の数が減って小さくなり、また発生率も大幅に減りました。
乳がん予防
みその抗がん効果の中でも、最近、とくに注目されているのが、乳がんです。
みそにはフィト・エストロゲンという植物性の女性ホルモン作用物質が含まれていて、乳がんの発生を抑えると考えられています。
胃潰瘍の予防効果
みそには、胃の粘膜を守る働きがあります。
みそ汁を毎日、またはときどき飲んでいる人は全く飲まない人に比べて胃炎や胃潰瘍、十二指腸潰瘍などの胃の病気が少ないという研究結果があります。
さらに、年齢別調査では、20〜50歳代間では大きな差はないものの、60歳を超えると、飲んでいる人は、とくに胃の病気になりにくいという高い数値がでました。
コレステロール上昇抑制効果
コレステロールは、人間にとって必要な成分ですが、余分なもの、体内にたまって血管に付着し、脳梗塞、心筋梗塞、血栓症などの原因になります。みその主原料の大豆に含まれるサポニンには、血清コレステロールが上昇するのを抑える効果があり、レシチンや食物繊維には、コレステロールを除く働きがあります。みそに加工しても、これらの作用には変わりがなく、血中コレステロール値の上昇を抑えるだけで、下げ過ぎる心配はありません。
脳卒中予防効果
脳卒中の大もとの原因は、動脈の硬化です。
サポニンは動脈を若々しく保ち、カルシウムは血液が凝固するのを防ぎます。
カリウムと食物繊維は余分なナトリウムを体外に排出し、マグネシウムはナトリウムがたまるのを防いで、血圧が上がるのを抑えます。その結果、動脈が硬化するのを防ぎ、脳卒中を予防します。
老化抑制効果
老化というのは全身の組織、機能が衰えることです。
それは血管や体細胞、脳細胞などがあげられます。この過酸化脂質が、さまざまな成人病をひきおこしたり、老化をすすめる大きな要素と考えられています。そこで老化の防止には、みそのような抗酸化物資を含む食品をとることが、重要なポイントになります。
美肌効果
メラニンは皮膚や毛髪の色を決める物質です。紫外線などの刺激に反応して増加すると、シミやソバカスができます。みそに含まれる遊離リノール酸には、メラニンが合成されるのを抑える働きがあります。昔からみそを造る人の手は白くすべすべしているといわれますが、毎日みそ汁を飲むことで、美肌効果が期待できるのです。
消化促進効果
たんぱく質は体に欠くことのできない栄養素ですが、消化吸収には時間がかかります。ところが、みそに含まれるたんぱく質は、約30%が分解されてアミノ酸になっているので、消化吸収がいいのです。みそには、さらに活性度の高い消化酵素が含まれているので、いっしょに食べた食品も、消化吸収がよいことになります。
整腸作用効果
「みそは消化薬のような働きをして腸をきれいにする」と江戸時代のことわざにもあるほど、その効用は広く知られていました。大豆の繊維質が腸をきれいにし、みそ中の微生物が腸内の腐敗菌や有害物を体外へ排出します。
疲労回復効果
発酵食品であるみそには、ビタミンB12が含まれていて、これには造血作用を促進し、神経の疲労を防ぐ働きがあります。香りの高いみそ汁をすすると、ほっとして疲れが吹き飛ぶものですが、決して気のせいではなく、みそにはそんな力があるのです。
新陳代謝促進効果
たんぱく質とビタミンB群を含む食品をとれば脳の新陳代謝がすすみ、頭の回転もよくなります。
さらに脳内での神経伝達の促進に欠かせないのがコリンとアセチルコリンです。
このコリンが、みそ中のレシチンに豊富に含まれているので、みそは健脳食といわれるのです。
出典:宮城県味噌醤油工業共同組合